「妊娠しやすい体」を支える栄養素
妊活をされている方にとって、「葉酸」はよく知られた栄養素ですが、実は近年、それ以上に注目されている栄養素があります。
それが「ビタミンD」です。
ビタミンDというと、「骨を丈夫にするビタミン」というイメージを持たれる方が多いのですが、最近では、生殖医療の分野でも非常に重要な役割を果たしていることがわかってきました。
特に体外受精の研究では、血中ビタミンD濃度が高い女性の方が、妊娠率が高いというデータが数多く報告されています。
つまり、ビタミンDは単なる栄養素ではなく、「妊娠力」に深く関わる物質なのです。
良い卵子を育てるために必要
妊娠において最も大切なものの一つが、「良い卵子」です。
どれだけ高度な不妊治療を行っても、卵子の質が低下していると妊娠にはなかなかつながりません。
ビタミンDは、卵胞の発育や卵子の成熟に関与していることがわかっており、卵巣の中にもビタミンD受容体が存在しています。
つまり卵巣は、ビタミンDの刺激を受けながら働いているのです。
体外受精でなかなか良好胚ができない方、採卵数は多いのに受精卵の質が伸び悩む方の中には、ビタミンD不足が背景に隠れていることがあります。
着床環境にも関係している
さらにビタミンDは、卵子だけではなく、「子宮内膜」にも大きく関係しています。
受精卵は、ただ子宮に戻せば着床するわけではありません。
赤ちゃんを迎えるための“ふかふかのベッド”が必要です。
ビタミンDは、子宮内膜の免疫バランスを整え、着床しやすい環境をつくる働きがあると考えられています。
繰り返し移植しても妊娠しない方の中に、ビタミンD不足が見つかることも珍しくありません。
「卵の問題だと思っていたら、実は子宮内膜環境も影響していた」というケースは、日常診療でもよく経験します。
なぜ日本人女性は不足しやすいのか
実は日本人女性の多くが、ビタミンD不足と言われています。
ある報告では、約9割の女性が不足または欠乏状態とも言われています。
その理由は大きく二つあります。
一つは、日本が比較的高緯度に位置し、冬場は紫外線量が少ないこと。
もう一つは、日本人女性のUVケア意識が非常に高いことです。
ビタミンDは、食事から摂れるのは全体の2割程度で、残りの8割は、紫外線を浴びることで皮膚で合成されます。
しかし、日焼け止め、帽子、日傘、長袖などで紫外線を徹底的に避ける生活をしていると、どうしてもビタミンDが作られにくくなってしまうのです。
特にデスクワーク中心の方や、外出が少ない方では不足しやすい傾向があります。
食事だけではなかなか足りない
ビタミンDは、鮭、サバ、イワシ、卵黄、きのこ類などに含まれています。
しかし、現代人の食生活では十分量を毎日摂取するのは意外と難しいものです。
しかも妊活中は、「不足していない」だけではなく、「妊娠しやすいレベルまで高める」ことが大切になります。
そのため「不妊ルーム」では、採血でビタミンDを測定し、不足している方にはサプリメント補充をおすすめしています。
サプリメントで改善しやすい栄養素
幸い、ビタミンDは比較的改善しやすい栄養素です。
数か月サプリメントを継続することで、血中濃度がしっかり上昇してくる方が多く見られます。
そして実際に、「ビタミンDを補充しただけで自然妊娠につながった」「移植がうまくいった」という女性を、「不妊ルーム」では数多く経験しています。
もちろん、ビタミンDだけですべてが解決するわけではありません。
しかし、“あと一歩”の妊娠力を押し上げる非常に重要な因子であることは間違いありません。
妊活が長引いている方へ
不妊治療というと、多くの方が「年齢」「卵巣機能」「ホルモン値」ばかりを気にされます。
しかし、見落とされやすい栄養状態の中に、妊娠のヒントが隠れていることがあります。
ビタミンDは、採血で簡単に測定できますし、保険診療で行える検査です。
「なかなか妊娠しない」「良い胚ができない」「移植がうまくいかない」と感じている方は、一度ビタミンDをチェックしてみる価値は十分にあります。
妊活は、特別な治療だけではありません。体の土台を整えることもまた、大切な妊活なのです。


