Non-妊娠ライフを楽しむ

今という時間は「空白」ではない

妊娠していない今を楽しむ——この言葉に、どこか引っかかりを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

「楽しめるはずがない」「そんな余裕はない」と感じるのも、ごく自然なことです。

しかし、あえて私は「不妊ルーム」見える方にこうお伝えしています。

今という時間は、“空白”ではなく、人生の中でとても豊かな意味を持つ時間なのです。

人は、自分が持っていないものに意識が向きやすい生き物です。

街でベビーカーを押すカップルを見れば、胸がチクリとする。

その感情を否定する必要はありません。

ただ、その一方で、今の自分にしかできないことにも目を向けてほしいのです。

例えば、静かなラウンジでワインを楽しむ時間、思い立ったらすぐに出かけられる自由、仕事に没頭できる環境。

これらは、人生のある時期にしか持てない大切な価値です。

ツアーコンダクターの彼女が教えてくれたこと

「不妊ルーム」に通われていた34歳の女性のお話を紹介します。

彼女はツアーコンダクターとして世界中を飛び回る仕事をしていました。

基礎体温表には毎日きちんとした記録があるわけではなく、むしろ空白が目立ちます。

しかし、その下の欄にはケープタウン、北京、パリといった都市名が並び、彼女の人生の躍動がそのまま記されていました。

彼女は通院から4ヶ月で妊娠されました。

ところが、その後の彼女は少しずつ元気を失っていきました。

妊娠をきっかけに仕事をグランドワークへと変わったのです。

「私はお客様と世界を旅することが本当に好きでした。今はチケットを手配していても、心が動かないのです」

と彼女は話してくれました。この言葉はとても象徴的です。

人は何かを得ると同時に、何かを手放しているのです。

今だからこそできる人生に目を向ける

妊娠は確かに大きな喜びです。

しかし、それは同時にライフスタイルの変化を伴います。

だからこそ、今という時間をただ「妊娠していない期間」として過ごすのではなく、「今だからこそできる人生」をしっかり味わっていただきたいのです。

妊活はゴールではなく、人生の一部に過ぎません。

そこにすべてを注ぎ込んでしまうと、心が疲弊してしまいます。

「不妊ルーム」は「卵巣セラピー」などで身体のサポートをします。

その上で、あなたには「生活」を大切にしてほしいのです。

好きなことに没頭する時間、心が喜ぶ体験、人とのつながり。

これらはホルモンバランスにも良い影響を与えますし、結果として妊娠しやすい状態をつくることにもつながります。

「忘れているとき」に訪れる自然な流れ

逆説的に聞こえるかもしれませんが、「妊娠のことを少し忘れているとき」に妊娠する方は少なくありません。

心が解放され、身体が自然なリズムを取り戻すからです。

常に結果を追い求める状態から、一度離れてみる勇気も必要です。

Non-妊娠ライフとは、決して我慢の時間ではありません。

それは、あなたの人生を豊かにする大切な時間です。

今を楽しむことは、未来をあきらめることではなく、むしろ未来への土台をつくる行為です。

どうか、ご自身の「今」に優しく目を向けてください。

その積み重ねが、やがて大きな実りへとつながっていきます。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)