妊活の漢方薬にはうれしい副作用がある

「副作用」にはどんなイメージがありますか?

「副作用」と聞くと、どちらかといえばマイナスの印象を持つ方が多いのではないでしょうか。

たとえば、頭痛薬を飲んだら頭の痛みは取れたけれど、胃がムカムカしてしまった、眠くなってしまった——

こうした経験をお持ちの方も少なくないと思います。

一般的に副作用とは、「本来の目的とは別に現れる作用」のことを指します。

そのため、どうしても“困ったおまけ”のように捉えられがちです。

では、妊活で使われる漢方薬の副作用はどうでしょうか。

実は漢方薬の場合、この「副作用」が、患者さんにとって“うれしい変化”として現れることが少なくありません。

漢方薬も薬です。ただし考え方が少し違います

まず大切なこととして、漢方薬もれっきとした「薬」です。

「自然のものだから副作用がない」というわけではありません。

ただし、漢方薬と西洋薬では、体へのアプローチの仕方が大きく異なります。

西洋薬は、特定の症状や数値、臓器をピンポイントで改善することを目的とします。

一方、漢方薬は、体全体のバランスを整えることで、結果として不調が改善していく、という考え方をとります。

漢方では、病気や不調を「体のどこかに生じた歪み」と捉えます。

その歪みを正し、体を本来あるべき“真ん中の状態”に戻すことで、主訴となる症状だけでなく、その周辺にある不調まで一緒に整っていく——

これが漢方の基本的な発想です。

「生理痛が軽くなった」「気分が落ち込まなくなった」

実際に妊活のために漢方薬を服用されている方から、よくこんなお話を聞きます。

  • 「生理痛が前より楽になりました」
  • 「PMSが軽くなって、気持ちが安定しました」
  • 「以前ほどイライラしなくなりました」

これらは、妊娠という目的だけを見れば“副作用”にあたります。

しかし、患者さんにとっては明らかにプラスの変化です。

妊活は、どうしても心と体の負担が大きくなりがちです。

生理のたびに痛みや不調が強かったり、気分の落ち込みを繰り返していると、「またダメだった」という思いが積み重なり、妊活そのものがつらいものになってしまいます。

漢方薬によって体の土台が整い、こうした不調が和らぐことは、妊娠への近道であると同時に、「妊活を続けられる体と心の余裕」を作ることにもなります。

妊活で使う西洋薬にも、うれしい変化が起こります

「不妊ルーム」では、漢方薬に加えて、必要に応じて西洋薬も併用します。

そのひとつが、ノベルジンという亜鉛と銅のバランスを整えるお薬です。

ノベルジンは、妊活において重要なミネラルバランスを調節する目的で使用しますが、実は皮膚疾患にも保険適用がある薬です。

そのため、服用されている方から、

「最近、化粧のノリがいいんです」

「肌の調子が安定してきました」

といった声をいただくことがあります。

これも、妊活という本来の目的から見れば“副作用”ですが、患者さんにとってはうれしい変化です。

肌の調子が良くなると、鏡を見るのが少し楽しくなります。

その小さな前向きな気持ちの積み重ねが、妊活を続ける力になることも少なくありません。

漢方の「副作用」は、体が整ってきたサイン

漢方薬で見られるこうしたポジティブな副作用は、偶然ではありません。

体の冷えが改善すれば血流が良くなり、肌や髪の状態が変わります。

自律神経が整えば、気分の波が穏やかになります。

消化吸収が良くなれば、疲れにくくなることもあります。

つまり、「うれしい副作用」は、体全体が良い方向に動き始めたサインとも言えるのです。

妊娠は、子宮や卵巣だけで起こる現象ではありません。

全身の血流、ホルモン、自律神経、栄養状態、そして心の状態——

そのすべてが関係しています。

漢方薬は、その土台作りを静かに、しかし着実に支えてくれます。

明るい気持ちで妊娠に向かうことが一番

私が「不妊ルーム」で漢方薬を使い続けている理由のひとつは、ここにあります。

漢方薬は、「妊娠するかどうか」だけでなく、「妊活の時間そのもの」を少し楽に、少し前向きにしてくれます。

妊活は結果がすべてと思われがちですが、そこに至る過程がつらすぎると、心と体が先に疲れてしまいます。

「体調が前よりいい」「毎月の生理が怖くなくなった」そんな変化を感じながら妊活に取り組めることは、とても大切です。

妊活の漢方薬にも副作用があります。

でもその多くは、患者さんの毎日を少し明るくしてくれる“うれしい副作用”です。

その積み重ねが、妊娠しやすい体と心を育てていく——

「不妊ルーム」はそう考えています。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)