「人間本来の力」を引き出すオキシトシン
ここ数年、「不妊ルーム」では「オキシトシン妊活」に本格的に取り組んできました。
その結果、私自身が驚くほど、妊娠される方が増えています。
とくに、40歳以上で体外受精を経験されてきた方が、これまでとは異なる経過で妊娠に至るケースが目立つようになりました。
なぜでしょうか?
妊娠には、医療の力だけでは説明しきれない「人間本来の力」が確かに存在するからです。
その力を引き出す鍵こそが、オキシトシンを中心とした脳と心の働きなのです。
体外受精と「オキシトシン妊活」の立ち位置の違い
体外受精は、妊娠のプロセスの多くを医療に委ねる治療法です。
排卵誘発、採卵、受精、培養、移植と、どれも高度の技術を要求される医療です。
一方で「オキシトシン妊活」は、妊活の主役を医療ではなくカップル自身に戻す考え方です。
自分たちの感情、関係性、日常の過ごし方の工夫が、脳内のオキシトシンの分泌を活発にし、妊娠力そのものを引き上げるのです。
妊活は「クリエイト」するものです
「オキシトシン妊活」は、指示通りに行う治療ではありません。
自分たちで創り上げていく妊活です。海外旅行、音楽鑑賞、美術館、舞台、温泉、アミューズメント。
これらは単なる気晴らしではなく、妊娠しやすい体を育てるための重要な要素です。
楽しい体験や感動は、脳を通して確実に身体へと伝わっていきます。
行き詰まったときこそ、立ち止まってください
不妊治療が長くなると、どうしても視野が狭くなります。
「次は何を試すべきか」「失敗したらどうしよう」と、思考が治療中心になってしまいます。
そんなときこそ、一度深呼吸をして、「オキシトシン妊活」という視点を思い出してください。
妊活を戦いから解放すると、これまで見えなかった景色が立ち上がってきます。
妊娠しやすさは脳内ホルモンの協調で決まる
人間の脳には、複数の神経伝達物質が互いに連携しながら働いています。妊活において特に重要なのが、次の三つです。
- オキシトシン:絆ホルモン
- ドーパミン:やる気ホルモン
- セロトニン:心の安定ホルモン
妊娠しやすい体は、どれか一つではなく、三つが同時に調和した状態で作られます。
オキシトシン——安心できる体をつくる
オキシトシンは、信頼、愛情、スキンシップによって分泌されます。
パートナーとの穏やかな会話、手をつなぐこと、抱きしめ合うこと。
その一つ一つが、体に「ここは安全だ」というメッセージを送ります。
妊娠とは、命を迎え入れる準備です。
安心できない状態では、体は無意識にブレーキをかけてしまいます。
ドーパミン——生きる力を呼び覚ます
ドーパミンは、ワクワクや喜び、達成感によって分泌されます。
妊活が義務や作業になると、このホルモンは著しく低下します。
一方で、人生を楽しむ感覚を取り戻すと、体は前向きなエネルギーを取り戻します。
妊活から一度離れる勇気が、結果的に妊娠力を高めることも少なくありません。
セロトニン——すべてを支える土台
セロトニンは心と体の安定を司ります。
朝日を浴びる、一定の生活リズムを保つ、穏やかな運動を続ける。
こうした基本的な生活が、妊活の土台になります。
セロトニンが整ってこそ、オキシトシンとドーパミンも本来の力を発揮します。
三つのアンサンブルが、妊娠しやすい体をつくる
この三つのホルモンが同時に整うと、体は自然に「妊娠してもよい状態」へと近づいていきます。
血流、自律神経、ホルモンバランスが静かに、しかし確実に変化していきます。
これは薬では作れない、人間本来の調整力です。
妊娠しやすいセックスとは何か
あえて率直にお伝えします。
妊娠しやすいセックスとは、義務的な行為ではありません。
安心と高揚が同時に存在し、心と体が一致した「燃えるセックス」です。
オキシトシンとドーパミンが同時に高まるとき、女性の体は最も妊娠に適した状態になります。
妊活は、人生を取り戻すプロセスです
「オキシトシン妊活」は、単なる妊娠テクニックではありません。
カップルがもう一度、自分たちの人生を楽しむための再設計です。
不妊治療に疲れた方こそ、ここから新しい一歩を踏み出してほしいと思います。
「不妊ルーム」は、その伴走者であり続けます。

