DHEAサプリメントを医師からもらうわけ

なぜ今、DHEAが注目されているのか

「不妊ルーム」では、DHEAサプリメントを用いて妊娠に至った方、とくに40歳以上で卵巣機能の低下が気になる年齢層の方が、明らかに増えてきています。

DHEAサプリメントは、卵巣の元気を引き出し、質のよい卵子が育ちやすい環境を整える補助となることは、臨床の実感としても無視できないものがあります。

年齢を重ねると、卵巣の働きが弱くなるのは自然の流れですが、その下支えをしてくれる一つのサプリとして、DHEAが注目されているのです。

DHEAサプリは以前、個人でインターネットなどを通してアメリカから簡単に購入できる時代がありました。

しかし2018年、法律が改正され、医療機関を通じてのみ使用できる形へと移行しました。

この背景には、DHEAが「サプリメント」という呼び名とは裏腹に、実際にはホルモン作用を持つ扱いの難しい物質であるという理由があります。

私は、医師の管理下で使用する現在の形が、医学的にも正しい姿であると感じています。

DHEAは“サプリ”というより、ホルモン剤に近い

まず知っていただきたいのは、DHEAが一般にイメージされる“サプリメント”とは異なる性質をもっているということです。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は、体内で男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストロゲン)の前駆体となる物質です。

つまり、飲んだDHEAは体内でさまざまなホルモンへと変換され、体調や卵巣環境に直接的に影響を及ぼしていきます。

この仕組みを聞けば、DHEAが「食品」という分類に収まるには少し無理があることがおわかりいただけると思います。

本来、サプリメントとはビタミンやミネラルのような“栄養の補助”であり、体内のホルモンバランスに強く影響するものではありません。

しかしDHEAは、摂取することでホルモン濃度を動かします。

ホルモン剤と同じ性質を持ちながら、以前はサプリメントとして自由に入手できてしまっていた。

この認識のズレが、健康被害のリスクを高めました。

その意味でも、医療機関での適正管理が必須となったことは、よかったと思います。

医師が管理する理由:コントロールの難しさ

医師のもとで使う必要があるもうひとつの理由は、DHEAの血中濃度コントロールが非常に難しいという点にあります。

一般的な薬は、服用量が決まれば、多くの人がほぼ一定の血中濃度になります。

しかしDHEAは、飲んだ量と体内濃度が比例しません。

吸収の個人差、代謝のスピード、DHEAサプリに対する感受性などが人によって大きく異なり、同じ量を飲んでも大きく差が出ることがあります。

さらに、DHEAは飲み過ぎても、少なすぎてもよい結果につながらず、“ちょうど良い範囲”が狭いのです。

このため、医師は定期的な採血によってDHEA-Sやテストステロンの値を確認し、最適な濃度を見極めながら調整していきます。

もし自己判断で服用を続ければ、男性ホルモンが過剰になることでニキビ、脱毛、体毛増加、月経不順などが起こり、むしろ妊娠から遠ざかるケースもあります。

つまり、医師の管理なしに使うとリスクが先に立ってしまうのです。

正しく使えば、40代の卵巣に“もうひと頑張り”してもらえる

ただし、この“扱いにくさ”は裏を返せば、正しく使えば効果が期待できるということでもあります。

とくに40代以上の女性では、卵巣のホルモン環境がよくないことも少なくありません。

発育途中の卵胞が十分に育たない、成熟度が低い卵子しか育たない、排卵しても受精しない——

こういった状況に対して、DHEAサプリは卵巣のホルモン環境を底上げし、より成熟した卵子が育つように助けてくれる可能性があります。

もちろん、DHEAサプリを飲んだから必ず妊娠できるわけではありません。

しかし、卵子の質を改善するための選択肢としてDHEAサプリがあることで、40代の妊娠の可能性が確かに広がったと私は実感しています。

だからこそ、正しい濃度で、正しい期間、正しい方法で使うことが重要なのです。

あなたの体質に合わせて、安全に、効果的に

「不妊ルーム」では、DHEAを使う際には以下の点を徹底しています。

  1. 採血による初期のホルモン値の確認
  2. 一定期間ごとのDHEA-S・テストステロン濃度のチェック
  3. 卵巣の反応をみながら投与量を微調整
  4. 副作用の有無の確認
  5. 他のホルモン剤との相互作用の管理

このように、DHEAは“、“管理しながら使うことで価値が出る”サプリメントです。

医師の指導のもとに使うことで、そのポテンシャルが活かされます。

まとめ:DHEAは医師と患者が一緒に使いこなすサプリ

DHEAはサプリメントという名を持ちながら、実態はホルモンに近い繊細な物質です。

だからこそ医療機関で扱う意味があり、医師が血中濃度を監視しながら使うことで、安全性も効果も高まります。

40代の妊娠を目指す女性にとって、卵巣の環境を少しでも整える選択肢が増えるのは大きな意味があります。

DHEAサプリはその可能性を秘めています。

あなたの体質やホルモン環境を丁寧に把握しながら、最適な使い方を探っていく——。

私はそれが、妊娠への道のりを一歩でも確かなものにする方法だと考えています。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)