35歳からは「心の妊娠適齢期」——卵子のエイジングを「チャンスに変える」考え方——

35歳からは「心の妊娠適齢期」——卵子のエイジングを「チャンスに変える」考え方——

卵子のエイジングを知ることから

ここ数年、「卵子のエイジング(老化)」という言葉を、テレビや雑誌、SNSなどで目にする機会が増えました。

いま、カップルの6組に1組が妊活につまずいている時代です。

その背景のひとつに、「卵子の老化」があることは、すでに多くの研究で示されています。

しかし、女性たちは、この「卵子の老化」という現実を、学校でも家庭でも教わらずに大人になりました。

私自身、長年「不妊ルーム」で多くの女性たちと向き合うなかで、

「卵子が老化するなんて知らなかった」

「もっと早く知っていれば…」

という声を、何度も何度も耳にしてきました。

卵子は生まれたときから減っていく

卵子は、精子とちがって、生まれたあとに新しく作られることはありません。

生まれたとき、卵巣のなかには左右あわせておよそ400万個の卵子(正確には「原始卵胞」)があります。

しかしこの卵子は、生まれた瞬間から少しずつ減っていきます。

思春期にはおよそ30万個ほどになり、そこからも加速度的に減少していきます。

排卵される卵子は一生のうち400〜500個程度。

残りの大半は排卵されることなく、時間とともに消えていくのです。

この「減少」は自然な生理現象です。

そしてもうひとつ、年齢とともに卵子の「質」も下がっていきます。

つまり、30代後半から妊娠しにくくなるのは、〝数〟と〝質〟の両方が関係しているのです。

卵子の老化は「悲観」ではない

こうして数字だけを並べると、35歳を過ぎたら妊娠のチャンスがなくなるように感じるかもしれません。

でも、それは違います。

卵子の老化は、たしかに無視できない現実です。

けれども、卵子の「質」はすべて一律に下がるわけではありません。

35歳を過ぎても、妊娠できるポテンシャルを持った卵子はしっかりと残っています。

実際、「不妊ルーム」で自然妊娠、あるいは自然に近いかたちで妊娠される女性の中心は、35〜40歳です。

40歳以上の女性の妊娠も普通になりました。

若いときより時間がかかることもあるかもしれません。

けれども、適切なタイミングの取り方、生活習慣の見直し、そして医療の力を上手に使うことで、妊娠・出産を叶えることができるのです。

「心の妊娠適齢期」という考え方

私は、35歳以降を「妊娠しにくい年齢」として捉えるのではなく、「心の妊娠適齢期」と考えています。

20代のころよりも、人生経験を積み、パートナーとの関係も成熟している。

自分自身の価値観や生き方を、しっかりと見つめられる年齢だからです。

こうした人生の経験値の高さを、妊活リテラシーとして生かすことを考えてみましょう。

35歳からは、「本当に子どもがほしい」という気持ちとしっかり向き合える年齢でもあります。

また、25歳の女性より35歳の女性の方が、周りにママになっている方がたくさんいるでしょう。

そうした人たちから、いろいろ子育てに関する知恵なども手にすることもできます。

そうした情報を、将来の楽しみとしてとっておきましょう。

妊娠・出産は、医学的な側面だけでなく、心の準備も大きな意味を持ちます。

心の準備ができているからこそ、治療を前向きに受け止められたり、自分のペースで妊活を進めることができます。

これは、20代にはなかなか得られない、大きな強みです。

「チャンス」を広げるためにできること

では、35歳からの妊活では、具体的にどんな工夫ができるのでしょうか。

まず大切なのは、「自分の体を正しく知ること」です。

排卵周期、基礎体温、ホルモンバランスなど、体のリズムを把握することで、妊娠のチャンスをつかみやすくなります。

そして、生活習慣の見直しも欠かせません。

睡眠、食事、ストレス管理は、卵子の質やホルモンの働きにも影響します。

さらに、必要であれば医療の力を上手に借りることも大切です。

タイミング療法、排卵誘発、人工授精、体外受精といった選択肢は、「最後の手段」ではなく、「チャンスを広げる方法」として考えてほしいのです。

年齢を重ねることは、決してマイナスではありません。

35歳を迎えるということは、自分の心と体をしっかり見つめる力を持っているということ。

これは妊活にとって、大きなアドバンテージです。

たとえ卵子が減っても、少しずつ老化しても、それを正しく理解し、行動する力を持つことで、妊娠・出産の可能性は確実に高まります。

「不妊ルーム」はサポートします

「不妊ルーム」は、「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」というモットーに沿って、フォローアップします。

あなたの妊活のポテンシャルを最大限に高めることを第一とし、それに加えて、「卵巣セラピー」で妊娠力を高めます。

そして、不妊治療が必要な方には、もっともふさわしい医療機関を、1万人の相談の経験から、あなたに提案します。

また、不妊治療医療機関とのコラボレーションもおこなっています。

私たち医療者の役割は、その道のりを一緒に歩き、必要なときにそっと背中を押すことです。

あなたの妊活を「今」から始めてみませんか。

未来の自分に「納得」を

「もっと早く知っていれば…」という声を、私はたくさん聞いてきました。

けれども、いまこの瞬間に知ったことこそが、大切なスタートです。

あなたにとって「今」が一番若いのですから。

35歳は、妊娠しにくい年齢ではなく、「心がしっかりと準備できる年齢」。

知識と行動があれば、年齢を壁ではなく味方にしましょう。

そして一歩ずつ、自分のペースで確実に進んでいきましょう。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)