不妊治療とセカンドオピニオン——あなたのための、もう一つの視点

不妊治療とセカンドオピニオン——あなたのための、もう一つの視点

不妊治療は、単に「妊娠すること」を目指す医療ではありません。あなたの心や体、そしてパートナーとの関係性、日常生活そのものにも大きく関わるものです。だからこそ、妊活・不妊治療において「自分で納得して治療を進める」という姿勢はとても大切です。

そのための有効な手段のひとつが「セカンドオピニオン」です。

セカンドオピニオンとは? 〜医師を変えることではありません〜

セカンドオピニオンとは、今受けている治療について、他の医師の意見を聞いてみることを指します。よく誤解されるのですが、「今の医療機関をやめて転院する」ことと同義ではありません。

あくまで現在の治療方針が妥当か、他に選択肢はあるのか、あるいは今の進め方に改善点はあるのかを客観的に確認するための手段です。多くの医師も、セカンドオピニオンを前向きにとらえています。

セカンドオピニオンを考えるタイミング

タイミング法を続けているが結果が出ないとき

タイミング法は排卵の時期を予測し、その前後で性交を持つ方法です。排卵検査薬の活用や超音波による卵胞チェックが一般的ですが、半年以上続けても妊娠に至らない場合、「年齢」や「排卵以外の要因(例:卵管、精子の状態)」を疑う必要があります。

そのときに他の医師の視点で「今、次のステップに進むべきかどうか」を確認することは、治療の大きな分岐点になり得ます。

人工授精を数回試みたが妊娠しないとき

人工授精は、運動性の良い精子を選別して子宮内に注入する方法です。自然妊娠に近い手法ですが、妊娠率は1周期あたり5〜10%程度とされています。

3、4回試みても妊娠しない場合、卵管の通過性、卵子や精子の質、またはホルモンバランスの異常などの別の要因を考える必要があります。

この時点でのセカンドオピニオンは、「次に進むべきか、もう少し続けるべきか」という判断に大きく役立ちます。

高度生殖医療(体外受精・顕微授精)を始めたが結果が出ないとき

体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)は、高度な医療技術が求められ、身体的・経済的・精神的な負担も大きくなります。そのため、1〜2回行ってもうまくいかなかった場合、「卵子や胚の質は?」「受精の過程で問題は?」「移植後の内膜の反応は?」といった、専門的な評価が必要になります。

自分が今、どの段階にいるのか。もっと違うアプローチがあるのか。そういった判断を下すためにも、別の医師の知見は大きな助けになります。

治療だけでなく「心のケア」にもつながる

不妊治療中は、自分を責めてしまったり、先が見えない不安に苦しんだりする方も少なくありません。そんな時、医師の言葉ひとつで心が救われることもあります。

特に注目されているのが「オキシトシン」というホルモンです。これは、「愛情ホルモン」「幸せホルモン」とも呼ばれ、心を安定させ、人と人とのつながりを強めてくれる働きがあります。パートナーとのスキンシップや、医療者との信頼関係の中でも分泌が促されることがわかっています。

信頼できる医師とつながることは、単に医学的なメリットにとどまらず、オキシトシンの観点から見ても「妊娠しやすい心と体」を作る一助になります。

セカンドオピニオンは「賢く選ぶこと」

  • 感情的に「今の病院がイヤだから」ではなく、冷静に「もっと知りたいから」という理由で行う
  • 診療情報提供書(紹介状)や、検査結果も持参することで、適切な意見が得られる
  • ネットの口コミや体験談も参考にはなるが、必ず専門医に直接相談する

「不妊ルーム」は、妊活に悩むカップルに最適なアドバイスを提供したいと考えています。セカンドオピニオンを受けてみたいと思ったら、どうぞ遠慮なくご相談ください。

「不妊ルーム」の経験から、高額な医療費をともなう体外受精にエントリーする前のセカンドオピニオンの重要性は、どれだけ強調しても、し過ぎることはありません。

前に進むための選択を

「赤ちゃんを授かりたい」という想いに対して、複数の視点からの知見を得ることは、決して後ろ向きではなく、「前に進むための選択」です。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)

弘前大学医学部を1987年に卒業後、都内で内科研修を経てドイツ・フライブルク大学病院に留学し、帰国後は東京大学大学院で医学博士号を取得。2004年に「こまえクリニック」を開院し、不妊治療と相談を専門とする「不妊ルーム」を運営。自身も4年間の不妊治療経験を持ち、ストレスケアを重視した診療を行っている。『令和版 ポジティブ妊娠レッスン』(主婦と生活社)をはじめ、不妊治療に関する著書も多数出版している。

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