今回の本を書きたいと思った理由の1つは、体外受精にどう向き合うか、
これは避けて通れない問題だと思ったからです。
不妊治療は年をおうごとに体外受精が占める割合が高くなり、
東京では、不妊治療≒体外受精の様相を呈しています。
そしてこの4月から始まった保険適用拡大により、
体外受精も3割負担で受けれるようになったため、
この傾向はますます強まると考えています。
残念なことに、保険適用が拡大されたことによって、
不妊治療が整理されるどころか、さらに複雑化して、
わかりにくくなったように思います。
それは保険適用拡大を、前向きに捉えるクリニックと、
後ろ向きに捉えるクリニックが混在しているからです。
そうした時代にあって、妊活に取り組んでいるカップルは
どのように行動すればよいのでしょうか。
ラーメン屋さん選びであれば、食べ歩きによって
自分の好きな店を決めることができますが、
不妊治療、とりわけ体外受精ともなるとそうはいきません。
もともと日本人には、医療のことはお医者さん任せにする傾向がありますから、
医師の言われるままに体外受精に誘導されて、
大変な目にあった方々の相談をたくさん受けてきました。
さいしょにドアをノックしたクリニックで、
そのまま体外受精を受けてしまうケースが本当に多いのです。
「体外受精を受ける前に相談にきてほしい!」
どれだけそう思ったかわかりません。
保険診療になったからといって、安かろう悪かろうでは困ります。
体外受精をはじめとする補助生殖医療は、
医師、看護師、胚培養士によるチームワークプレーですから、
医療機関のチーム力による実力の差が激しいのです。
医療機関選びというと難しいことのように思えますが、
「不妊ルーム」20数年の経験から、医療に詳しくないカップルでも、
体外受精医療機関の選び方がわかるのだとお教えしたいのです。
それに対する私なりの案内を示したいと思いました。
ところで、現在日本中で「●●アート・クリニック」
「○○ARTクリニック」というのが増えておりますが、
「ART」「アート」とは何を意味しているかお分かりでしょうか?
実はARTとは補助生殖医療、すなわち体外受精・顕微授精などと同義なのです。
こうしたこともわかっていないカップルがほとんどだと思います。
今回の本では、レッドオーシャンと化した体外受精の海の中で
溺れないよう、正しい羅針盤を示したいと思っています。