今回の本を書きたいと思った理由の1つは、
不妊診療の健康保険適用拡大後の現状を
皆さんに知っていただきたいと思ったからです。
菅内閣時代に、不妊治療の保険適用拡大が政策の1つとして発表されました。
そして令和4年4月1日から新しい不妊治療の制度が始まりました。
不妊治療は人工授精、そして体外受精までが健康保険適用となったわけです。
私はこれによって不妊治療というものが整理されるのではないかと期待していたのです。
しかし3ヶ月経ったその実態は、不妊治療がますます混沌としてきたと感じています。
不妊治療で最も高額なのは、言うまでもなく体外受精ですが、
これも3割負担で受けれるようになったわけです。
その結果どういうことが起きたかと言いますと、3つのグループが発生したのです。
1つ目のグループは厚生労働省の制度に忠実に従って、
保険適用のもとで体外受精を行う医療機関です。
2つ目のグループは、保険適用下の体外受精では、
検査、治療に制約が大きいので保険適用の治療は行わず、
これまで通り自由診療で行うグループです。
そして3つ目は、ホームページなどに健康保険適用のメッセージを載せておきながら、
受診してみると、自由診療に誘導されてしまうグループです。
こうしたことを患者さんは、医療というあまりなじみのないものの中で、
イニシアチブをとって決定していくことは難しいでしょう。
ですからここに本を書く理由があると、私は思いました。
私は厚生労働省が、ホームページに掲載している健康保険適用での
体外受精の検査・治療内容を詳しく見てみました。
そして、検査も、治療も、妊娠に導ける内容になっています。
料理で例えてみると、わかりやすいと思います。
お金に糸目をつけず、高級食材を自由に使って料理を作ってよいというのであれば、
多くの料理人はおいしい料理を作ることができるでしょう。
しかし家庭の冷蔵庫の中の食材を使って、
おいしい料理を作るのがプロの料理人ではないでしょうか。
私は今回の本では、そうした料理人の見つけ方について、
わかりやすく解説していきたいと思っています。