ある30歳の女性は、前医で多のう胞性卵巣と診断されておりました。
彼女は私に「私はクロミッドを一日3錠飲んでも排卵しない」と言いました。
多のう胞性卵巣の患者さんで注意すべき事は、
排卵させるために過剰な刺激を外から加えると、
卵巣過剰刺激症候群が出やすいという問題があります。
彼女の基礎体温は、高温期のない典型的な無排卵の基礎体温表でした。
そこで私は、クロミッドは一日一錠で五日間の服用、
排卵障害に効果があると言われている
ウンケイトウという漢方薬を併用するようアドバイスをしました。
すると彼女はこの治療により排卵が起こり、そのまま妊娠したのです。
この経験は、私に漢方薬が症例を選べば効くのではないかという印象を、
強く抱かせました。
幸いな事に当院で妊娠される方は、その後も増え続けましたが、
フォローアップ開始してからは、妊娠された方の
7割以上の方が過去不妊治療を経験されている方でした。
この事は私の脳裏に自然発生的に
「不妊治療不妊」という言葉を想起させました。
※多のう胞性卵巣:卵巣の中で卵子が成熟し卵胞は大きくなってくるが、
卵子が卵巣の外に飛び出すことが出来ないという排卵障害の疾患