不妊ルームの院長が執筆いたしました書籍「35歳からの妊娠スタイル」の内容の一部をご紹介いたします。
卵巣の機能をチェックする
2つの検査とは?
●FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)検査
妊娠を困難にする因子のひとつは、女性の年齢、もう少し踏み込んで言うと卵巣内の卵子年齢です。卵巣機能をチェックする指標としては、以前より血液検査による血中FSH(卵胞刺激ホルモン)の値が用いられてきました。このFSHは、その名前のとおり、卵胞を刺激して卵子の発育をうながすホルモンです。
女性は年をとるにつれて、卵子が発育しにくい状況になってきます。そこで体のほうはなんとか卵子の発育をうながそうと、FSHをより多く放出するため、30代後半からこの血中FSHの値がじりじりと上昇しはじめます。30代半ばまでは、8未満(単位はmIU/ml)の方が多いのですが、40歳を過ぎたころから10を超えた値になることが多くなります。そして、この値が15を超えると妊娠が難しくなり、20を超えると妊娠はほぼ困難といわれています。
このFSHとペアで測定されるのが、LH(黄体形成ホルモン)です。このホルモンの役割は、1章の排卵日検査薬のところでもお話ししましたが、ひとことで言ってしまえば、「排卵させること」です。女性の年齢が高くなると、排卵もしづらくなりますから、FSHほど敏感でないのですが、LHの値も上昇します。
また、FSHとLHは、脳の下垂体にある視床下部から分泌されるホルモンで、生理周期による変動が激しいのが特徴です。そこで、通常このホルモンを測定するのは生理期間中で、このときの値を「基礎値」と呼びます。LH、FSHとも、30代後半あたりから、月によって基礎値のばらつきがみられるようになるのも特徴です。
ところで不妊診療の現場では、FSHの数値がよくないと、あとから述べるAMHなどと同様に「卵巣が老化しています。早く体外授精に進みましょう」などといったことになりやすいのです。
●FSHやLHの値があまりよくない結果だったときは?
FSHやLHの値が高い場合でも打つ手はないのでしょうか。「不妊ルーム」では、FSHが高い場合、漢方薬を処方することによって、多くのケースで効果が見られることを実感しています。漢方薬はこれから本章で述べる体内インフラを整えるアイテムのひとつであり、体内インフラを整えることで、こうしたホルモンの値をより妊娠しやすい状態に近づけることができます。
さて、当院の「不妊ルーム」では、40代女性の妊娠も普通になってきましたが、そうした女性達の妊娠した周期の基礎値を振り返ってみると、FSHの値が低く、LH/FSHのバランスがよい周期で妊娠に至っていることが多いのです。基礎体温表にはFSHとLHの数値も記入しておき、もし数値の改善が把握できれば、妊娠のチャンスも高まります。
Lesson 9
FHS、LHの数値がよいときは妊娠の可能性が高まる

「35歳からの妊娠スタイル」