妊娠率とは?本当の妊娠率について考える - 東京の不妊治療

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コラム

妊娠率とは?本当の妊娠率について考える

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2020年10月26日

妊娠率とは?本当の妊娠率について考える

妊娠率の定義

これまでIVFの実際を追ってきましたが、ここからはまず、IVFの妊娠率について少し深く考えていきたいと思います。なぜならば、これから体外受精などのARTに臨もうという患者さんにとって最大の関心事は、「妊娠率」すなわち、その治療を受けることによって、自分がどれくらいの確率で妊娠できるかだと思うからです。

この妊娠率というものが、実際は最もミステリアスであり、神秘のベールに包まれているといっても過言ではありません。それは、ARTにおける医療機関の技術水準に著しい格差が見られて、なおかつその技術や実績があまり表に出てこないことがあります。そして何よりも、妊娠率という定義そのものが非常に曖昧であり、実質的に無いに等しいということが大きく影響していると思います。

たとえば、妊娠「率」というからには、分子と分母が存在するわけですが、その分子、分母の両方がとても曖昧なのです。

妊娠率の分母と分子はあいまい

まずは妊娠率の分母について考えてみたいと思います。

その妊娠率の分母を理解するには、体外受精のプロセスを思い出してください。すなわち、分母の母集団を「採卵」あたりとするのか、それとも「移植」あたりとするのかによって、妊娠率は当然大きく異なります。なぜなら、採卵を行っても移植までの段階で数多くの卵子がドロップアウトするからです。

また、受ける側としては、排卵誘発を行った段階から、自分はもうすでにIVFにエントリーしていると感じており、医療機関側との温度差が感じられる面も否定できません。

さらにその妊娠率の分母を複雑にしているのは、移植する胚の数です。日本産科婦人科学会では、そのガイドラインで体外受精1回当たりの移植胚は3個までとしていますが、これは必ずしも守られているわけではありません。移植する胚を多くすれば妊娠率は高くなりますが、多胎が生じる可能性も高くなります。逆に多胎や品胎(三つ子)を避けるために2個あるいは1個(単一胚移植)しか移植しない方針をとっている医療機関もあり、同じ土俵での議論が難しいわけです。

分子については、その妊娠の判定を尿検査での妊娠反応(化学的妊娠)とするのか、超音波検査での胎のう確認(臨床的妊娠)にするのかでも変わって来ます。化学的妊娠の場合、妊娠していないのに妊娠反応陽性になるケース(偽陽性)もありますし、子宮外妊娠のケースもあります。医療機関によっては、胎のうの確認および胎児心音確認をもって妊娠と判定するところもあり、各医療機関で統一されていないのです。

ART妊娠率22%という数字

妊娠率について、産婦人科学会では2002年の全国のART施設にけるARTによる妊娠率を22.1%と公表しています。

ARTの妊娠率をどう思うかというアンケートに対し、私はARTを経験された、あるいは視野に入っている女性にARTの妊娠率に関してアンケートを行ったことがあるのですが、その答えの多くはこのようなものです。

Aさん:個々の医療機関によって技術差があるのは、外科手術等にも見られることなので、成功例などの情報があいまいでなくきちんと開示される事が望ましいと思います。

Bさん:厚生労働省のような公的な機関が、妊娠率の分子と分母の定義をつくり、統一するべきではないでしょうか?

2種類の妊娠率が示す意味

1991年の日本産科婦人科学会の報告する体外受精の妊娠率は、18.1%と、15.5%という2つの数字が示されています。なぜでしょうか?

ここからは妊娠率の分子のお話になるのですが、1990年まで、妊娠の判定は尿での妊娠反応陽性をもって妊娠としてきました。しかし、不妊治療がだんだんと普及し、それが一般的になるにつれて、不妊治療の過程でhCG製剤が多用されることになりました。hCG製剤の注射によって妊娠反応において、「偽陽性」が出ることはよく知られたところです。日本産科婦人科学会ではそうしたことを重くみて、1991年からは妊娠の判定を、超音波検査において子宮内に胎児が入っている袋、すなわち、胎嚢の確認をもって妊娠とするというふうにあらためられたのです。したがって15.5%というのは胎嚢確認での妊娠率、18.1%というのは化学的妊娠も含めた数字ということになります。

医療機関のホームページなどを見るとすぐにわかることなのですが、妊娠率を掲載している医療機関において、その多くが妊娠率の分母や分子が曖昧だったり、分母や分子を明確に掲示していない場合も多く見られます。多くの医療機関で、「当院の妊娠率」などとして掲載されている数字は、全国平均でも30%近い数字となっていますが、これは妊娠率を採卵1回当たりではなく、胚移植1回当たりの数字として計算しているからです。体外受精にエントリーし、無事採卵までにこぎ着けても、この卵子の受精、培養の過程で約4分の1がドロップアウトし、胚移植には至らないということはぜひ覚えておく必要があります。

IVF(体外受精)の妊娠率はここ10年でほぼ横ばい

体外受精における妊娠率は、1999年までの10年ほぼ横ばい状態です。そして、その後も大きな変化はみられません。

日本産科婦人科学会が公表している統計によれば、2002年の1年間で24,788組のカップルが、延べ34,953回のARTの治療を受けました。その内7,727組において妊娠となりました。この数値から計算すると、カップル当たりの1年間の妊娠率は31.2%となります。しかし、この中には1年間に2回、3回と体外受精を繰り返しているカップルもいますので、体外受精1回の治療当たりの妊娠率は22.1%となるわけです。この数字を見て、ホームページ上などの妊娠率よりかなり低いと思われる方も多いでしょう。しかし、体外受精1回当たりの妊娠率の全国平均が22.1%というのが厳粛な事実なのです。

さらにいうと、22.1%という妊娠率も水増しされている可能性も否定できません。それは、こうした数字は各医療機関から日本産科婦人科学会へ自主申告により報告されたデータに基づいて出されたものであるからです。体外受精によって生まれてくる体外受精児が増えているのは、それにエントリーする人、すなわち分母が年を追うごとに大きくなっているからなのです。

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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