最近PGT-Aという検査を行う医療機関が急速に増えてきました。
そのせいか、体外受精にエントリーされている方から、
PGT-A検査に関する質問を多く受けるようになりました。
ここではこのPGT-A検査についての内容と、
私の個人的な感想を述べてみたいと思います。
体外受精の世界では、これまでの2日間の初期胚培養だけではなく、
5日〜6日間培養して、
受精卵を胚盤胞という状態にまで育てることが一般的になりました。
胚盤胞は、70個〜100個の細胞から構成されています。
PGT-A検査とはこの胚盤胞から1割程度の細胞を採取し、
その染色体検査を行うものです。
これによって21トリソミー(21番染色体が3つある)
などの染色体異常を見つけることができます。
ですからダウン症等の出現が予想される場合、
それを事前に防止できるわけです。
しかしこの検査にはいくつもの問題点があります。
この検査は保険適用外であり、この検査を行うと、
体外受精全体が自由診療になりますから、
4月から実施された保険診療が適用されなくなります。
要するに体外受精の医療費が3〜4倍に跳ね上がってしまうわけです。
また、またこの検査自体、胚盤胞1個につき10万円〜15万円と高額です。
こうした金銭的な問題だけではなく、この検査には、
偽陰性、偽陽性が、それぞれ1割程度あると言われています。
すんわち染色体異常がないのにもかかわらず異常ありと判定される、
その逆もあるというわけです。
そして何よりの問題点は、この検査によって、
胚盤胞がダメージを受けることです。
PGT-A検査を行って異常なしと判定された胚盤胞を移植して、
妊娠が成立しなかった場合、2つの可能性が考えられます。
ひとつは、染色体以外の要因によって妊娠しなかったことです。
もうひとつは、PGT-A検査を受けたことによって、
胚盤胞がダメージを受けたために妊娠が成立しなかった可能性です。
心情的な話になりますが、私はこのPGT-A検査に関することを、
資料を集めて勉強していると、何とも言えない息苦しい、
切ない気持ちになってしまいます。
あくまでも個人的な感想ですが…。
またこのPGT-A検査は染色体を調べるわけですから、
XXの性染色体を持つ胚盤胞を移植すれば女の子が、
XYの染色体を持つ胚盤胞であれば男の子が生まれます。
要するに男女産み分けが行えてしまうわけです。
こうした目的での検査は、日本産科婦人科学会は認めていません。
PGT-A検査をどのように取り扱うのか、まだまだ議論が必要だと思います