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コラム

人工授精とは ~人工授精の3つの課題~

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2020年7月31日

人工授精とは

人工授精について少し詳しく解説してみたいと思います。人工授精の歴史は古く、1799年にイギリスで最初に妊娠が報告されて以来、世界的に広まり、日本でも、1893年にはじめて、人工授精による赤ちゃんが誕生しました。

人工授精は今ではポピュラーになった不妊治療法ですが、それでも私のもとには「人工授精をすすめられて悩んでいます」とか、「今度人工授精をしましょうといわれました。私の体はそんなに悪いのでしょうか?」などといったメールでの相談が届きます。人工授精をネガティブにとらえている人が多いのです。それはなぜか……私は人工授精には、3つの課題が存在していると思うのです。

課題その1 「人工授精」という言葉がネガティブ

「人工」という言葉そのものにネガティブな響きがあります。人工授精という言葉には妊娠という現象が極めて人為的に操作されてしまう、造られた妊娠というイメージを持ってしまうわけです。人工授精の人工とは artificial という英語の訳なわけですが、もう少し柔らかい表現を用いたネーミングにすれば、誤ったイメージを持つことが避けられるのではないでしょうか。人工授精とは端的にいえば、パートナーの精液の一部を女性の子宮の中に注入することです。不妊治療のメインストリートは、「精子と卵子の距離を縮める」ということです。タイミング法においては、卵胞チェックによりその日時を縮めようと医師は努力します。人工授精では、自然妊娠において精子が平均14cmを泳いで卵子に到達しなければならない距離を、精子を直接子宮の中に注入することによって、平均7cmすなわち半分に短縮するわけです。しかし、全く手を加えないそのままの精液を注入すると、感染などの危険があるため、さらにより妊娠率を上げるため、スイムアップ法、パーコール法などといった手技を用いて、濃縮、洗浄し、元気のいい精子を注入するという方法が一般的となっています。

※スイムアップ法:運動能の高い精子を高濃度で回収する目的で行われる精子洗浄濃縮法の1つ。遠心分離した濃い精子の液に、培養液を注いで30分間静置し、上のほうに元気に泳いでくる (swim up) 精子を回収し、人工授精に使用します。

※パーコール法:試験管に少しずつ密度の異なるパーコールという液体を積み重ね、そこに精液を加え、遠心分離します。こうすることにより、精子の濃度が高まり、運動率の高い精子がえられます。しかし、パーコールそのものが、精子に対して毒性があるとの指摘もあり、最近は減少傾向にあります。

課題その2 人工授精の妊娠率が低い

人工授精の妊娠率はおしなべて低く、人工授精1回当たりの妊娠率は、5%〜8%程度で、全国的に見てもどこも低いという印象を持っています。例えば、軽度の精子無力症や乏精子症、あるいは女性側の経管粘液不全などの患者に人工授精を行えば、理論的には高い確率で妊娠に至るはずなのですが、現実にはこうした症例においても人工授精の妊娠率は高くありません。

私はかねがね人工授精に新しいブレイク・スルー(突破口)が登場すれば、不妊治療という医療が劇的に様変わりするのではないかと思っています。そして、人工授精にエントリーするにあたって注意しておかなければいけないことは、人工授精の段階で、薬剤の投与、とりわけhCGの注射には注意が必要だということです。最近になって、「hCGによる卵の質の低下」ということが問題視されるようになってきています。人工授精の妊娠率が低いがゆえに、何回も人工授精を繰り返すことにより、結果としてhCGの使用量が増えてしまうという悪循環になりやすいのです。多くの不妊治療のドクターの意見や、私の印象としても、人工授精で妊娠される方は、最初の3回までの人工授精で妊娠してしまうという傾向がみられます。ですから人工授精をおこなう方は、どのような方法で、何回をめどにおこなうのか、どのような薬や注射をどれだけ使用するのか、医師の説明をきちんと受け、さらに、患者側の希望を医療機関側に明確に伝えておくことがとても大切です。

また、医療機関によって、人工授精の方法に著しいばらつきが見られます。さすがに、なにも手を加えない精液をそのまま注入するという方法はだんだんと減ってきてはいますが、なくなったわけではありません。また卵胞チェックだけを行い、排卵のタイミングを予想して、パーコール法やスイムアップ法で調整した精液を注入しても、妊娠率は低いという印象を私は持っています。私のこれまでのいろいろな医療機関で人工授精を受けられた数多くの患者さんの印象からいうと、卵胞チェックの後にGnRHアゴニスト(商品名スプレーキュア、ブレセキュアなど)を用いてフレア・アップ現象による排卵誘発を期待し、その後に人工授精を行うという方法が、現在のところ最も良好な成績を得ているようです。GnRHアゴニストは長期期間連続使用すると、排卵を抑制してしまいますが、排卵前にごく短期間使用すると逆に強く排卵を促すという性質があり、その方法を利用した排卵誘発が少しずつ増えてきています。この人工授精方法を使用するのは、先ほど述べた「hCGによる卵の質の低下」を避ける意味もあります。

課題その3 人工授精を念頭に置き、自然妊娠をあきらめてしまう

人工授精にエントリーすると、自分たちには「もう自然妊娠はあり得ない」という思いこみが生じやすいということです。実際、人工授精にエントリーしたあたりから、セックスレスのカップルが見られるようになります。私のこれまでのフォローアップの経験からも、不妊症に関する決定的な因子がなければ、人工授精を経験していても、自然妊娠や、タイミング法での不妊治療による妊娠も当然あり得ます。実際、当院でも人工授精経験者が、漢方薬のみ、あるいは排卵誘発剤のみといったステップダウンにより、多くの方が妊娠されています。ですから、人工授精をおこなっている不妊症の方にも、自然妊娠も期待するように、アドバイスをすることにしています。

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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