不妊症治療における体外受精(IVF)の流れ・その2―採卵

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コラム

不妊症治療における体外受精(IVF)の流れ・その2―採卵

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2020年8月12日

採卵方法の現状

 排卵誘発の結果、卵胞の成熟が順調に経過すれば次は採卵ということになります。採卵は、現在では無麻酔で、あるいは局所麻酔、静脈麻酔下に経腟的に注射針を用いて行うという方法が世界中で行われています。しかし、このことはある意味で革命的なことでもあると思います。

 世界最初の体外受精児であるルイーズ・ブラウンさんの母親レズリー・ブラウンさんが体外受精を受けた際には、こうした技術はありませんでした。当時は、手術室において全身麻酔下に腹腔鏡を用いて卵巣から卵子を取り出すという、とても大がかりな方法がとられました。また当時は、経腟超音波検査なども行えませんでしたから、卵胞の成熟度を画像情報として検討するということもできませんでした。

 世界で最初に体外受精を成功させたエドワーズ博士は、論文の中で人間の体において排卵を促すLHサージが起こってから排卵するまでの時間が、36時間であるということを突き止めるまでに2年間の時間を要したと懐述しています。経腟超音波法で卵胞の大きさを観察しながら、経腟的に注射針で採卵が行えるようになったことが、体外受精が今日のような爆発的な広がりをみせた大きな理由です。

採卵という「手術」

 さて、話を採卵に戻しますと、採卵に先立つ36時間前にhCGという注射を多くの場合使用します。この注射により、卵胞内の卵子の成熟がより促進されるのみならず、核内で減数分裂などが始まります。別の言い方をすると、冬眠状態であった卵子が、このときはじめて受精に向けて目覚めるのです。排卵はhCGの刺激から36時間前後で行わなければなりません。そして、このとき一斉に成熟した卵胞内の卵子を収穫するのです。

 このことを畑で実っているトマトの収穫にたとえると、ヒトの卵子を採卵するということの難しさがわかってもらえると思います。あるとき、トマトを収穫しようと思えば、赤く色づいた食べごろのトマトを収穫するはずです。このトマトはまだ青いからもう少し後にしようとか、このトマトはもはや成熟し過ぎておいしくないだろうという判断は誰にもはたらきます。すなわち、日を変えて個別に収穫することが可能なのです。しかし、人の卵子はhCG刺激のあとの一時点で一斉に収穫しなければなりませんから、仮にたくさんの卵子を採卵できても、その中身は未だ十分に成熟にいたっていない卵子や、卵胞の大きさは十分でも中に卵子が存在していなかったり、全く受精能力のない変性卵だったりすることもあり得ます。また排卵誘発を行ったからといって、全例で採卵できるわけではありません。卵子が成熟しなかった、あるいは、すでに排卵が終わってしまっていたなどの理由で、排卵誘発を行っても10%~20%の症例はこの時点でドロップアウトします。

 さらに重要なことは、これまで述べたように採卵という手技は劇的なまでに簡単にできるようにはなりました。しかし、針を刺して採卵するだけとはいえ、局所麻酔や静脈麻酔などもしばしば用いられます。採卵というのは厳密には「手術」なのです。

採卵を行うにあたって重要なこと

 私がここで強調したいことは、もし体外受精などを行うのであれば、その医療機関に不妊症治療に携わる常勤の医師が複数存在するかどうか必ず確認してほしいということです。たとえば、良心的な医療機関では、採卵に際して1人の医師が卵子の採取を担当し、もう1人の医師が麻酔を担当するという役割分担がされています。あなたが今、体外受精を考えている不妊症治療機関のこうしたシステムがどのようになっているのか、確認しておくことは本当に大切だと思います。

 ここでいう医師とは、常勤と書いたようにいつもその不妊症治療機関にいるのかどうかということが大切です。なかには、大学から週半日~1日アルバイトで来ているところや、すでに第一線から退いている医師をスタッフとして名記している医療機関もありますから、注意が必要です。あなたの体をいわば預けることになるわけです。そこで安心して治療が受けれるかよく考えてください。ある婦人科医の指摘である「医師1人で行える不妊治療は、人工授精まで」という考え方を私は支持します。

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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