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コラム

【書籍試し読み】不妊治療の不都合な真実(12)

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2020年2月5日

不妊治療の不都合な真実

目次

    不妊ルーム院長が執筆いたしました書籍「不妊治療の不都合な真実」の内容の一部をご紹介いたします。

     

    ■「助成金」は税金をドブに捨てている

    医療上の理由から体外受精を必要としている人は、現実に存在します。

    まず男性の精子の数が足りない場合には、体外受精が有効です。通常であれば1億から2億の精子があるはずのところ、100万しかないという症状の男性がいます。この数値が500万を切ると自然妊娠、あるいは人工授精でも妊娠は無理で、唯一の選択肢は体外受精ということになります。

    また女性の場合でも、卵管の両方が詰まってしまうと、体外受精以外に妊娠の方法はありません。問題が卵管閉塞だけなのであれば、体外受精により高い確率で妊娠が期待できます。世界で最初に体外受精で生まれたルイーズ・ブラウンは、卵管が両方とも閉塞していたレズリー・ブラウンという母親から生まれました。彼女の場合、子どもを授かるには体外受精以外の方法はあり得ませんでした。

    卵管を詰まらせる最大の因子はクラミジア感染症で、これは性行為による感染症です。男性がクラミジアを持っていて、知らずに性交渉をしてしまうと、この感染症にかかります。これは男性の側にはあまり症状が出ないのです。卵管は最も細いところで一ミリもない、とても細いホースみたいな管です。そこでクラミジアが増殖し炎症がおこると、卵管は簡単に詰まってしまう。卵管は左右に二つありますが、その両方が詰まってしまうと、自然妊娠は不可能になります。

    いずれにせよ、これらの場合は体外受精の絶対適応といえますから、公的助成を行うのは妥当です。さらに顕微授精が登場して以後は、運動能力の高い精子が一匹あれば妊娠できるようになりました。また、「無精子症」と診断されても、そのタイプによっては妊娠できる技術が生まれています。こうした人たちのための助成であれば、まったく理に適ったものだといえます。しかし、いまではこうした絶対適応のケース以外にも、少子化対策の名の下に、公的助成がおこなわれているのです。

    次の章でくわしくご紹介するとおり、体外受精の「現場」は大学病院から、すでに個人クリニックに移っています。大きな助成金が投じられることで、クリニックが勢いを増しているのです。

    はじまった当初の体外受精は最先端医療だったので、大学病院などの大病院を舞台に行われました。しかし、その先端医療にイノベーションが出現したことで、クリニックへのシフトが起こったのです。

    大きなブレイクスルーになったのが、体外受精における採卵の技術革新です。かつては卵子をとるためには全身麻酔を行える大学病院クラスの病院への入院が必要でした。すでに述べたとおり、これは腹腔鏡下におこなわれました。

    ところが経膣的に卵子を取れるようになったことで全身麻酔の必要がなくなり、外来でもできる医療になりました。そうなると、さまざまな規制があり、フットワークが重い大学病院のようなところよりも、そこから出て自分でクリニックを開いたほうが早い、という流れになっていきました。

    本来は、体外受精をしないと絶対に子どもを授かることができない人(これを「絶対適応」といいます)のための医療手段だったものが、「どういう方法でもいいから、とにかく妊娠したい」というカップルのニーズと「自由診療」の名の下に、体外受精のガイドラインは実質的になし崩しになっていったのです。

     

     

    不妊治療の不都合な真実

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    ≪院長プロフィール≫
    こまえクリニック院長 放生 勲

    昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

    都内の病院にて2年間の内科研修

    フライブルク大学病院および
    マックス=プランク免疫学研究所留学

    東京大学大学院医学博士課程修了
    (東京大学医学博士)

    平成11年5月こまえクリニック開院


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