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コラム

【書籍試し読み】不妊治療の不都合な真実(11)

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2020年1月31日

不妊治療の不都合な真実

目次

    不妊ルーム院長が執筆いたしました書籍「不妊治療の不都合な真実」の内容の一部をご紹介いたします。

     

    第4章 体外受精への公的助成は「死に金」でしかない

    ■「不妊に悩む方への特定治療支援事業」は誰のため?

    体外受精及び顕微授精(本書ではこれをまとめて「体外受精」と呼びます)に対する公的助成(正式名称は「不妊に悩む方への特定治療支援事業」、略して「特定不妊治療」とも呼ばれる)が、日本では2004年からスタートしました。

    本書のはじめにも述べたとおり、私は体外受精に反対するものではありません。また、それに対して公的助成を行うことに対しても、基本的には賛成です。世の中には医学的な理由によって体外受精でなければ子どもを授かることができない人がいます。体外受精は保険の効かない自由診療であり、医療費がきわめて高額です。医療を必要とする人に対して、適切な公費助成が行われるのは健全なことです。

    ただし、それは適切な制度設計がなされていれば、の話です。

    驚くべきことに、つい最近まで日本の特定不妊治療事業では、体外受精に対する助成にいっさい年齢制限がありませんでした。ようするに45歳でも50歳でも、「体外受精をしたい」という人に対しては、世帯年収制限のみで助成金が支払われていたのです。

    特定不妊治療事業の制度は何度かの見直しを経て、ようやく2015年度から「43歳未満」という年齢制限ができました。また年収制限に関しては、制度がはじまったときは「世帯あたり650万円」だったものが、2007年から「730万円」に緩和されました。しかしこれは本来、医療行為として体外受精を必要としている人間に対する助成であるべきです。病気の治療に対する助成であれば、その条件は年収や年齢ではなく、病状や程度が問題にされるべきでしょう。

    そもそも助成金は社会的なセーフティネットであってしかるべきです。セーフティネットの例として、いちばんわかりやすいのは生活保護です。このお金がなくては生きていけないという人に、セーフティネットとして生活保護費が支給されるのは、誰がどう考えても正しいことです。しかし体外受精への助成が生活保護のような意味でのセーフティネットになっているのかといえば、私にはたいへんに疑問です。

    適用の可否が世帯年収で制限されている場合、極端な話をいえば、「助成金シフト」として、女性がパートの時間を減らすことで調整することもありえます。そうしたことが可能である点でも、いまの助成制度はセーフティネットと呼ぶにはふさわしくない制度設計になっているのです。

    公的助成を受ける患者さんにとってもいい話ばかりではありません。助成額の上限は30万円ですが、体外受精の料金は一般的に一回40〜80万円、なかにはそれ以上のところもありますから、患者さんは自腹でも何十万という大きな出費をしなければなりません。この自己負担分を払う余裕のない生活をしているカップルは、はじめから選択肢として体外受精を考えられないわけです。つまり、本当に必要としている人のための助成にはなっていないのです。

    しかも、体外受精の料金は、最近値上げの傾向にあると私は感じています。15万円の助成が得られても、体外受精の料金が15万円値上げされれば、なんのための助成かわかりません。これではクリニックを助成しているようなものです。

     

     

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    ≪院長プロフィール≫
    こまえクリニック院長 放生 勲

    昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

    都内の病院にて2年間の内科研修

    フライブルク大学病院および
    マックス=プランク免疫学研究所留学

    東京大学大学院医学博士課程修了
    (東京大学医学博士)

    平成11年5月こまえクリニック開院


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