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コラム

【書籍試し読み】不妊治療の不都合な真実(10)

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2020年1月28日

不妊治療の不都合な真実

目次

    不妊ルーム院長が執筆いたしました書籍「不妊治療の不都合な真実」の内容の一部をご紹介いたします。

     

    ■女性の社会進出が不妊を増やした

    現代社会は、働く女性がきわめて妊娠しづらい社会です。そうなってしまった大きな理由の一つとして、社会に進出する女性の多くが優秀なため、社会の側が彼女たちを手放そうとしない、という現実があります。

    サラリーマン川柳の名作に、「部長いる? 返した言葉は『いりません』」というものがありますが、そのくらい今は女性が現実の社会の中で能力も立場も持っています。皮肉なことに、それが女性たち自身を追い込み、女性が子どもを作りたいと思ったときに大きな障壁にもなっているのです。こまえクリニックに来る女性のなかにも、「今週は仕事の関係で採血に行けません」などといった話は日常茶飯事です。

    あるキャリアウーマンの女性のことを思い出します。私はうちに相談にくる女性に、かならず基礎体温表をつけるように指導しており、彼女にもそのようにしていました。

    ところがその女性の基礎体温表を見ると、表の下の方には、|←ニューヨーク→|、|←フランクフルト→|、|←サンフランシスコ→|などと矢印が引いてあるだけで、その部分の基礎体温の記入がすべて抜けていました。仕事で頻回に外国へ行くため、その間は基礎体温を記録できないわけです。

    これらの外国の都市名の合間には、私が処方した「クロミッド」という排卵誘発薬の名前が書き込んでありました。|←クロミッド→|などと書いてあるのを見ると、薬の名であるのに、まるでどこか外国の都市名のように思えてしまったほどです。

    これほどまでに世界中を忙しく飛び回り、仕事にやりがいを見出している女性は、そこから足を抜くことはできません。こういう時間のない女性が不妊治療にエントリーすると、体外受精の方向へ進む確率が高いのです。

    ただでさえストレスの多い現代社会を生きている女性は、不妊治療を受けると、それがさらにストレスとなり、不妊を悪化させてしまうことがあります。女性の生理周期は、二週間の低温期を経て排卵したら高温期になり、生理が来ると低温期という具合に、一ヶ月に二週間ずつ低温期と高温期を繰り返します。この規則正しい生理周期は、脳下垂体の下にある視床下部が中枢となって司っています。

    また、私たちは緊張すると心臓がドキドキします。ところが家に帰ってソファなどでリラックスしていると、しぜんに心拍数が落ちます。これは意志とは無関係に起きることで、こうしたことを司る神経を自律神経といいます。自律神経は交感神経と副交感神経からなりますが、一般的に交感神経は心拍数を速くするなど、促進的に働きます。それに対して副交感神経は抑制的に働く。その二つの神経の綱引きで、身体のバランスをとっているのです。そして我々の社会は、促進的に働く交感神経が優位な社会です。

    この交感神経と副交感神経の働きを司る中枢がどこにあるかといえば、やはり脳下垂体の視床下部なのです。女性の生理周期を司る中枢と、自律神経を司る中枢はまったく同じ、つまり同じ指揮者がタクトを振っているわけですから、自律神経が乱れると、生理周期も乱れるのは当たり前です。

    職場でいやな上司の下に異動になったとたん生理周期がガタガタになったり、極端な場合には生理が止まってしまったりすることは起きて当然です。有名な話ですが、ご主人が戦争で兵隊に取られると、きわめて高い確率で妻に無月経が起きる。これは国を問わずに起きていることです。旦那さんが戦争にとられて死ぬかもしれないということほど、女性がストレスを感じ、交感神経優位になる話はありません。

    いまの不妊医療はこうした側面が置き去りにされているのです。

     

     

    不妊治療の不都合な真実

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    ≪院長プロフィール≫
    こまえクリニック院長 放生 勲

    昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

    都内の病院にて2年間の内科研修

    フライブルク大学病院および
    マックス=プランク免疫学研究所留学

    東京大学大学院医学博士課程修了
    (東京大学医学博士)

    平成11年5月こまえクリニック開院


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