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コラム

【書籍試し読み】不妊治療の不都合な真実(4)

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2019年9月15日

不妊治療の不都合な真実

目次

    不妊ルーム院長が執筆いたしました書籍「不妊治療の不都合な真実」の内容の一部をご紹介いたします。

     

    第3章 体外受精の深い闇

    ■あまりにも高額な医療費のもとで「ギャンブル」化する体外受精

    不妊治療がタイミング法、人工授精、体外受精-胚移植というステップで行われることはすでにお話しました。

    このうちタイミング法には保険診療が適用されるのに対し、人工授精、体外受精は自由診療です。自由診療とは医療行為を受ける側の希望に対して医師が応じるというかたちで行われるもので、基本的に料金設定も自由です。人工授精は1回あたり2〜3万円、体外受精の料金はだいたい1回40〜80万円ですが、高いところでは、100万円を超えるところさえあります。

    こうした高額の体外受精を何度も繰り返したにもかかわらず、なかなか結果が出ず、ギャンブル中毒のようになってしまった結果、1000万円以上のお金をムダにしたうえに子どももできず、心身ともにボロボロになってしまった患者さんにお会いすることもあります。

    体外受精が他の自由診療と根本的に異なるのは、これもすでにお話したとおり、その妊娠率がきわめて低く、いわば「失敗して当たり前」の医療だということです。

    たとえば審美歯科で歯並びを矯正する場合、歯並びが必ずきれいにならなければ、100万円近くもする治療費をだれも払わないでしょう。目を二重まぶたにすることも同じで、基本的に自由診療は「成功して当たり前」、もし失敗すれば訴訟リスクを抱えることにもなりかねません。

    ところが体外受精が失敗すると、患者さんは必ず医師から次のようなことを言われます。

    「ご主人の精子に力がなかった」
    「卵子に育つ力がなかった」

    こうした言い回しを私は、体外受精を受けた方から何十回聞いたかわかりません。体外受精の失敗は、卵子の質や精子の力のせいにされてしまいがちなのです。

    おかしいのは、ここに「医療機関の技術」に対する評価が抜けていることです。現実には、医師や培養士の技術、スキルが低いせいで体外受精に失敗するケースも多いのです。しかし体外受精を行う医師の側は、自分たちの力がなかったことなど認めようとしません。

    ところが、あるクリニックで体外受精を5回試みてすべて失敗した方が、私が紹介した別の医療機関で、たった一回の体外受精で妊娠してしまうようなケースが多々あります。こういう例からもわかるとおり、体外受精が失敗した責任を負うべきなのは患者さん側の卵子や、精子の「力」だけではなく、医療機関の側の実力も問われるべきなのです。

     

    それを象徴する、ある患者さんの例を紹介します。かりにSさんとしましょう。

    以下は、Sさんから最初に届いたメールの文面です。

    はじめまして。私、***産婦人科にて治療を始め3年半になるSと申します。34歳の時、***産婦人科に通い始め現在37歳です。長いことタイミング療法(14回)を続けていたのですが妊娠に至らず、2年前位から人工授精に切り替えました(人工授精12回)。それでもできないので昨年5月から体外受精を受け始めたのです。

      1度目:昨年5月から排卵誘発を始めたのですが、
          いざ採卵というときにすでに排卵しており採卵できず。
      2度目:7月に2個採卵をしたものの受精せず。
      3度目:9月に3個採卵し、そのうち2個顕微で受精し、
          ETするも妊娠に至らず。
      4度目:今年1月に2個採卵し、顕微で1個受精するも、
          胚分割せずETに至らず。

    今年9月で38歳になってしまい、もうのんびり***産婦人科にまかせているのはどうかと思っております。そんなところに知り合いの方から「私は***産婦人科に通っていたが不安を覚えて、放生先生に相談した」との話をきいて御相談申し上げたいと思ったのです。先生はどうお考えになりますか?

     

    私はこのメールに対して、「有益なアドバイスは行えると思うので、一度相談に来てみませんか」と返信しました。

    体外受精に4回もトライしながら、一度しか胚移植に至っていないこと、また、採卵すらできなかった周期があることなどから、私はSさんに「医師の能力や培養士の技量にも問題があるかもしれない。このあたりで、レールのポイントを切り替えることが今のあなたにとって一番大切なことだと思う」とアドバイスしました。

    そして最後に、「あなたの失われた3年半を取り戻せるかどうか、それは何ともいえません。しかし、それを取り戻す最大限の努力はいたします」と彼女に伝えました。

    それからしばらくして、彼女は私のところに相談にみえました。ご本人は今後も体外受精を受けたいという明確な意志をおもちでした。私はARTの水準が高い不妊治療の専門医療機関に彼女を紹介しました。

    しばらくすると、Sさんからまたメールがありました。

    前医では、「左の卵巣の位置が悪いといわれ、採卵がとても難しい。左で卵胞が育った場合は人工授精に切り替えます」と言われていたのです。それを●●先生に言ったところ、

    「確かに左の卵巣は採卵の時に子宮をかすめるギリギリの位置だけど、
     うちは採取しますよ。無理やりにでも絶対とってみせますから」と、

    恐ろしいような頼もしいようなコメントを頂きました。

    実際、Sさんは1回だけの体外受精で妊娠し、無事に母になることができました。ようするに、彼女の場合は卵子にはなんの問題もなく、受診していた医療機関の質のほうに問題があったわけです。

    じつはSさんが治療を受けたふたつの医療機関は、数kmしか離れていません。しかし、その距離を埋めるのに、3年半の歳月を要したわけです。

     

     

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    ≪院長プロフィール≫
    こまえクリニック院長 放生 勲

    昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

    都内の病院にて2年間の内科研修

    フライブルク大学病院および
    マックス=プランク免疫学研究所留学

    東京大学大学院医学博士課程修了
    (東京大学医学博士)

    平成11年5月こまえクリニック開院


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